木陰の子

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これは6年くらい前の「ほっほ」という芸名もなかった頃の出来事。

春日部でイベントがあった。

とあるマンション賃貸のブースの客寄せで風船(バルーンアート)を

配ってくださいというお仕事。

用意してもらった控え室で着替えをしメイクをしてそれから出演場所に移動。

もう子供が集まっていた。

「ピエロさん早く風船つくってよー」というたくさんの子供達、

一列になってもらい一人一人欲しいものを作っていく。

風船をもらった子供は満足そうな顔で他のブースに移動していく。

風船作っている途中、一人だけ遠くの木の陰からこっちを見ている子に気がついた。

おいでよとジェスチャーで呼ぶが、顔を横に振って来ない。

また風船を作り始め、列の最後の子供にうさぎの風船をあげた。

やっと一息つき。また回りを見渡したら、まだその子供が木の陰からこっちを見ていた。

僕はこういう子供に対して無理やり風船などをあげようとは思わない

メイクが怖くて近づけない子、あれはなんの生物なんだと見てくる子、

ピエロ恐怖症を持った子など色々知っているからだ。

一回控え室に戻り昼食休憩、メイクを直しまたブースに移動。

そしてまた風船づくり。午後は午前中よりもっと人が多く集まっていた。

すぐに行列になり、また一人一人風船を作っていく。

次つぎに作っていく途中に見覚えがある子がそこに立っていた。

さっき木の陰に隠れていた子だ。5歳位で野球帽を被っている。

なんだかすごく緊張した表情で目の前にいる。

他の子供と同じように風船をあげ、握手して「よく来れたね」と言い、

頭をなでてあげた。「ピエロさんありがとう」と答えてくれた。

それからずっとそばで風船をつくるところを楽しそうに見ている。

そして夕暮れになり、担当者からもう上がっていいよと言われブースを離れた。

控え室に向かいながら、ずっと僕のあとをついてくる子に気がついた、

さっきの木陰の子だ。

控え室までついてきて中にまで一緒に入ろうとしてきた。

でもピエロは子供の前では着替えられないし、もちろんメイクも

落とせないので(子供の夢を壊してはいけないとよく師匠から言われていた)

「もうここでお別れだよ」と木陰の子に答えた。

そしたら木陰の子が「また会えるよね」と聞いてきたので

うん、「また会おうね」と僕は答えた。

木陰の子は真剣な顔で「絶対だよ、約束だからね指切りしよ」と言うので、

指切りなんて何年ぶりだろうと思いながら僕も指をだし、

小さい小指と指切りをした。

木陰の子は満面の笑みになり、じゃあ「またね」と言い、

控え室の前からゆっくり離れていきながら、小さい手で僕に手を振ってくる。

そして何回も振り返り、遠くから「ピエロさーん」と呼んで笑顔で手を振ってくる。

僕は笑顔になり木陰の子が見えなくなるまで精一杯大きく手を振って返した。

“子供の純粋さを感じ、心が癒やされたとっても大事な忘れられない思い出“

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